隙間に挟まる話

右耳を信用するな、左が心臓だ。あなたの隙間に、そっと挟まります。

虫は無視の域

 

 

※このブログには虫の表現があります。

苦手な方は、

両目をお玉で交互に隠しながら読んでください。

 

 

 

 

 

 

 

 


ねぇ聞いてくださる?

うちには、例の黒い虫がよく出るの。

そいつのこと、私は親しみを込めて

「カサ・カサーカス・テカ彦」と名付けている。

名前の由来はまさか、わかるでしょう?

 


……って!聞いてる?

ちょっと、こたつを弱にして寝てんじゃねぇ!

…えっ?起きてるの?

テレビ見てるの…?

 


その顔で…?

腹話術師に操られてる人形みたいなその顔で…?

 


ほんとに……?

 


せめて口閉じてもらいな。

奴が入ってくるからね!

 


テカ彦は神出鬼没で、いつも私たち夫婦をびびらせる。

そしてダナは奴が死ぬほど嫌い。

 


ちょっと前なんて、キッチンツールの引き出し開けたら出てきた。

お玉と一緒に……おったま現象!なんて言ってる余裕もない。

ほんと、びっくり箱かと思ったんだから。

 


私も苦手だけど、ダナのビビり具合は異常。

顔面蒼白。身体がガチガチに固まって動けなくなる。

 


自分は目の上に2匹もフサフサの毛虫飼ってるくせに。

ホクロを餌に育てて、どんどん成長してる勢いなのに…。

虫ダメとか意味わからん。

 


この前出たときなんて、

棒立ちで、口だけパクパクさせながら

「早く…やれ…!」って指示してきた。

いや、声は出せよ!聞こえねぇよ!

 


その顔もひどい。眉間に皺寄りすぎ。

毛虫つなげて、とうとう一匹に進化させてんじゃないよ!

 


仕方なく私が仕留めた。

お玉で目を隠しながら。

 

 

……お玉を握りしめたまま、一息ついたところで。

 


次の出現は深夜1時。

洗面所の隙間から羽音を鳴らしながら堂々の登場。

壁を登って飛び回る。

カサ、カサカサ……

 


「きぁあぁあぁ!!ばさ美ちぁぁぁん!!助けてぇ!!」

深夜に響き渡る、ダナの悲鳴。

 


うるせぇ。今度は聞こえすぎだよ!

近所迷惑甚だしいよ。

口にホウ酸団子詰め込んでやろうか!!

 


なんだよ、声出るのかよ。

この前は腹話術人形みたいに口だけパクパクしてたから、

声なんて出ないもんだと思ってたよ。

 


ってか、リアルで「キャー」とか言う人、実在したんだな。

推しに出会ったわけでもあるまいし。

 


「ばさ美…!ばさ美ぃ……!」

お前のその呼び方が、一番虫っぽいんだけど!?

バサバサバサバサ……お前がモスラかよ!!

 


……ん?いや、この場合……私か?

粉吹いてるし……優しいし…?

 


ばさ美、妖怪モスラの威厳を持って駆けつける。

勢い余ってタンスの角で触角を強打。

ジンジン……ジンジン……

蝉でも止まったのかと思った!

 


……もう、虫のくだりしつこいよ。

そういうとこが誤解されやすいんだぞ、モスラ。

 

 

テカ彦のパフォーマンスに疲れたダナは、

後日こっそり撃退グッズを揃えていた。

 

 

冷却スプレー、死骸を片付けるちりとり、そして窒

息死させるための食器用洗剤。

犬がいるから殺虫剤は使わない──という優しさだ

けは添えて。

でも、使うのは私なんだよ。

 

 

だいたい、「キュキュット」なんて買ってきて!

こっちはJOYサウンドで「愛しのチャーミー」練習

してたんだぞ?「マジカで恋する5秒前」もスタン

バイしてたのに。

 

 

せめて一声かけてから任命してくれよ。

私だって妖虫なんだぞ!

 


ほんと、いい歳した大人なんだから、自分でなんとかしてほしい。

いつまでも人に頼りっぱなしなんだから。

 


だいたい都合よく人に頼って……虫がいいんだよ、ほんと。

腹の虫がおさまらねぇよ。

お前の水虫に、苦虫噛み潰して塗りこんでやろうか!!

 


ペットのトリミングも自分でできないくせにさぁ……

まったく!世話が焼けるおっさんだ。

眉毛用のハサミってどれ買ってあげたらいい……

 


……って、あれ?パソコンの様子が……変……?

 

ねぇダナ、ちょっと見て?

……え?ウイルス入ってるって!?

 


きゃぁあぁぁ!!どうしよぉぉぉ!!

早くぅーー!!ダナァーーー!!!!

 


……あ、ちがっ。

なんか怖い夢見てた。

 


いや、起きてたけど寝てた。

寝ながら起きてたっていうか…。

 


ちゃんと……半分目は開けてたし!

しっかり、団子の話、聞こえてたし!

 


ちゃんと……

正確には……起き上がり小法師になってたし!!

 


え?なんか、うるさかった?

声……出てた?

 


それ、さ……

 

私じゃなくて、

多分いっこく堂の声だと思うから

……無視していいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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